5.2. ブートパラメータ

ブートパラメータとは Linux カーネルのパラメータのことで、 一般には周辺機器を適切に扱うために用います。 ほとんどの場合、カーネルは周辺機器の情報を自動的に検出します。 しかし、場合によっては少々カーネルを助けてあげないといけないこともあるのです。

システムを初めて起動する場合は、デフォルトのブートパラメータを試して (つまりなにもパラメータを設定せずに)、正確に動作するか観察してください。 たいていはうまくいくと思います。 なにか問題が起こったら、 そのハードウェアに関する情報をシステムに伝えるためのパラメータを調べ、 あとで再起動します。

多くのブートパラメータの情報は (曖昧なハードウェア用の tips 込みで)、 Linux BootPrompt HOWTO で見つけられます。 本節は、最も顕著なパラメータの概要だけを含んでいます。 いくつか共通のものは 項5.3. 「インストールプロセスのトラブルシューティング」 以下に含まれています。

カーネルが起動するときには、プロセスの最初のほうで

Memory:availk/totalk available

というメッセージが表示されます。 total は利用可能な RAM の総量をキロバイト単位で表しています。 この値が実際に搭載している RAM の量と一致しないときには、 mem=ram というパラメータが必要になります。 ram のところには、実際に搭載しているメモリ量を、 キロバイト単位なら 「k」、 メガバイト単位なら 「m」 を後ろにつけて記入します。例えば、 mem=65536kmem=64m も 64MB の RAM を意味します。

起動の際にシリアルコンソールを使うと、通常カーネルはこちらを自動検出します 。 ただし、シリアルコンソールから起動させたいコンピュータに ビデオカード (フレームバッファ) とキーボードもついている場合には、カーネルに console=device というパラメータを渡す必要があるでしょう。 device は利用するシリアルデバイスです。 これは普通 ttyS0 のようになるでしょう。

5.2.1. Debian Installer パラメータ

インストールシステムは、 おそらく便利だと思われる、追加起動パラメータ[4]をいくつか認識します。

debconf/priority

このパラメータには、表示するメッセージのもっとも低い優先度を設定します。

デフォルトのインストールでは、 debconf/priority=high を使用します。 優先度が「高」のものと、「重要」のもののメッセージを表示し、 「標準」や、「低」のメッセージはスキップします。 問題にぶつかった場合、インストーラは必要な優先度に調整します。

ブートパラメータに debconf/priority=medium を追加すると、インストールメニューが表示され、 インストールについて、さらに多くの制御を行うことができます。 debconf/priority=low を使った場合は、 すべてのメッセージを表示します (expert 起動法と等価)。 debconf/priority=critical の場合は、 インストールシステムは重要なメッセージだけを表示し、 大騒ぎせずに正しい設定をしようとします。

DEBIAN_FRONTEND

このブートパラメータはインストーラで使うユーザインタフェースを 制御します。現在有効な設定は以下の通りです。

  • DEBIAN_FRONTEND=noninteractive

  • DEBIAN_FRONTEND=text

  • DEBIAN_FRONTEND=newt

  • DEBIAN_FRONTEND=slang

  • DEBIAN_FRONTEND=ncurses

  • DEBIAN_FRONTEND=bogl

  • DEBIAN_FRONTEND=gtk

  • DEBIAN_FRONTEND=corba

デフォルトのフロントエンドは DEBCONF_FRONTEND=newt です。 シリアルコンソールでインストールするには、 DEBIAN_FRONTEND=text とすべきでしょう。 一般的に、デフォルトのインストールメディアでは newt フロントエンドのみが利用可能です。 そのため、今現在あまり有用ではありません。

BOOT_DEBUG

このブートパラメータに 2 を設定すると、 インストーラの起動プロセス中に詳細なログを出力します。 3 を設定すると、起動プロセスの要所でデバッグ用のシェルが利用できます。 (シェルを終了すると起動プロセスを継続します)

BOOT_DEBUG=0

デフォルトです。

BOOT_DEBUG=1

通常よりも詳細です。

BOOT_DEBUG=2

デバッグ情報を大量に表示します。

BOOT_DEBUG=3

詳細なデバッグを行うよう、ブートプロセスの様々な箇所でシェルが実行されます。 起動を続けるにはシェルから抜けてください。

INSTALL_MEDIA_DEV

このパラメータの値には、Debian インストーラを読み込むデバイスのパスを指定します。 例えば、INSTALL_MEDIA_DEV=/dev/floppy/0 となります。

ブートフロッピー は root フロッピーを探すのに、 通常全フロッピーと USB ストレージを検索しますが、 このパラメータで 1 つのデバイスを探すように上書きできます。

debian-installer/framebuffer

いくつかのアーキテクチャでは、多くの言語でインストールを行うために、 カーネルフレームバッファを使用します。 フレームバッファが問題となるシステムの場合、 debian-installer/framebuffer=false パラメータによってこの機能を無効にできます。 bterm や bogl に関するエラーメッセージや、真っ暗な画面、 インストールが始まって数分後にフリーズがおきたら問題の兆候です。

video=vga16:off 引数はフレームバッファを無効にする効果もあります。 そのような問題が、Mobile Radeon を搭載した Dell Inspiron について報告されています。

debian-installer/probe/usb

起動時の USB の検出で問題が起きる場合は、 これに false を設定してください。

netcfg/disable_dhcp

デフォルトでは、debian-installer は DHCP によりネットワークの設定を自動検出します。 検出が成功すると、確認する機会がなく検出値を変更できないでしょう。 DHCP の検出が失敗する場合のみ、手動ネットワーク設定を行えます。

ローカルネットワークに DHCP サーバがあるのに、それを回避したい場合 (例: 誤った値を返す等)、 DHCP でのネットワーク設定をせず手動で情報を入力するのに、 netcfg/disable_dhcp=true パラメータを使用できます。

hw-detect/start_pcmcia

PCMCIA サービスが原因で問題が発生する場合、 false を設定することで、 起動しないようにすることができます。 いくつかのラップトップコンピュータには、 そういう行儀悪さがあることが知られています。

preseed/url

preconfiguration ファイルをダウンロードする URL を指定します。 これは自動インストールで使用します。 項4.7. 「自動インストール」 を参照してください。

preseed/file

自動インストールで読み込む preconfiguration ファイルの PATH を指定します。 項4.7. 「自動インストール」 を参照してください。

ramdisk_size

2.2.x カーネルを使用するのなら、 ramdisk_size=13000 を設定する必要があるかもしれません。



[4] カーネルは最大でコマンドラインオプションを 8 つと、 環境オプションを 8 つ受け付けます。 (インストーラがデフォルトで付加するオプション含む) もしこの数を超過すると、 2.4 カーネルは超過したオプションを無視してしまいますし、 2.6 カーネルはカーネルパニックを起こしてしまいます。